ヒアリSolenopsis invictaについて

6月頃から侵入のニュースが絶えないヒアリ.アリ研究者の端くれとして何か貢献できれば良いのですが,私はヒアリを生でみたこともないので,生態や防除については詳しい人に譲ります.以下の2つのサイトが大変有用です.ぜひご一読を.

 

JIUSSI(社会性昆虫学会日本支部)のヒアリ解説 (琉球大 辻和希さん執筆)

ヒアリの識別方法・特徴など(兵庫県人と自然の博物館 橋本佳明さん執筆)

 

ニュースや世間の反応について思うことを少しだけ書きます.

 

1)過剰反応する必要はないです.JIUSSIのサイトでもコメントしていますが,刺されたからといってまず死んだりはしません.ただしアナフィラキシーショック(アレルギー学会ガイドライン)が疑われる場合,すぐに病院にいきましょう.

2)いまのところ(17.7.15),港湾地帯で侵入直後の小集団しか見つかっていないので,港湾地帯やコンテナ搬入場所とその周辺の方以外がヒアリに出くわす可能性は極めて低いと思われます.やみくもにアリを恐れて,庭やそこら辺のアリをむやみに駆除することは絶対にやめましょう.アメリカでの在来アリ相の操作実験では,在来アリ相の貧弱化が,侵入防除に対して逆効果になる可能性も指摘されています(Tschinkel & King 2017 Func Ecol).

 もし庭や道路の植え込みで一般市民の方がヒアリに出くわすような事態となれば,その時点で(定着してる可能性が高く)たぶん完全防除はかなり難しいです..そうなるまえに水際で防ぐべく,多くの研究者・公共機関の方々が尽力されている段階です.いまは人員・資金などのリソースをきっちり,正しく水際対策に向けることが大切だと思うので,むやみに恐れるより,これを機にアリの生態や形態について学び,知恵を早期発見・防除に活かすことがよいのではないかと思います.